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研修医必見!月状骨周囲脱臼を誤診しないための実践ガイド
【月状骨周囲脱臼とは?見逃しやすい理由と診断のポイント】
**月状骨周囲脱臼(げつじょうこつしゅういだっきゅう)**とは、手首の骨である月状骨(げつじょうこつ)を中心に、周囲の手根骨が脱臼するケガのことです。
この脱臼は、初診時に見逃されやすいため、適切な診断と治療を行わないと、手関節の機能障害を引き起こす可能性があります。
【月状骨周囲脱臼の見逃しが多い理由】
- X線写真での見落とし
- 初期の単純X線では、脱臼が明確に映らないことがあり、誤って「手関節捻挫」と診断されることがある。
- 外見上の変化が少ない
- 腫れや痛みはあるが、骨折ほどの明らかな変形がないため、軽傷と判断されやすい。
- 救急診療での時間的制約
- 外傷患者が多い救急外来では、迅速な診察が求められるため、詳細な画像評価が後回しになることがある。
【診断のポイント】
- X線の撮影方向を工夫する
- 単純X線の正面・側面だけでなく、斜位撮影やストレス撮影を追加する。
- CTやMRIを活用する
- 特に不安定型脱臼が疑われる場合は、CTやMRIで靭帯損傷の評価を行うことが重要。
- 月状骨の位置異常を見極める
- Spilled tea cup sign(カップがこぼれたような月状骨の前方転位)をチェックする。
【月状骨周囲脱臼の分類と適切な治療法】
月状骨周囲脱臼には、いくつかの分類があります。適切な分類を知ることで、最適な治療方針を選択できます。
【Mayfield分類(メイフィールド分類)】
月状骨周囲脱臼は、損傷の進行度によって以下の4段階に分類されます。
ステージ |
特徴 |
ステージ1 |
舟状骨-月状骨間の靭帯損傷(舟状骨-月状骨解離) |
ステージ2 |
月状骨-大菱形骨間の靭帯損傷(舟状骨-月状骨-大菱形骨解離) |
ステージ3 |
月状骨-三角骨間の靭帯損傷(手根骨全体の不安定性) |
ステージ4 |
月状骨が完全に脱臼し、前方へ転位(完全月状骨脱臼) |
【治療の原則】
1. 早期診断と整復
- ステージ1〜3 → 徒手整復+固定(ギプスorピン固定)
- ステージ4 → 手術(靭帯修復+ピン固定 or スクリュー固定)
2. 関節鏡視下手術の活用
- 関節鏡を用いることで、靭帯損傷の評価や、最小侵襲での整復が可能。
3. 術後リハビリ
- 固定期間後、早期リハビリを導入し、可動域を確保することが重要。
Stage1のSL解離は橈骨遠位端骨折にも合併することがあるので、特に見逃さないよう注意が必要です。
【研修医が知っておくべき!月状骨周囲脱臼の実践的対応】
【救急外来での対応フロー】
- 問診
- 受傷機転の確認:「手をついて転倒」「高所からの落下」などを詳細に聞く。
- 身体診察
- 手関節の腫れ・圧痛・可動域制限を評価(特に舟状骨や月状骨周囲)。
- 画像検査
- 単純X線(斜位撮影を追加)
- CT/MRI(靭帯損傷や骨片の有無を評価)
- 診断後の対応
- 整復が可能な場合:徒手整復+ギプス固定
- 不安定型や整復困難な場合:専門医にコンサルトし手術適応を判断
【後遺症を防ぐポイント】
- 誤診を防ぐため、疑わしい場合は追加検査を積極的に行う。
- 診断後は必ず経過観察し、必要なら早期手術を検討する。
- リハビリテーションを適切に行い、手関節の機能回復を図る。
【まとめ】
月状骨周囲脱臼は、診断の難しさから見逃されやすい外傷の一つです。まれな外傷ですが、
適切な画像診断、分類に基づいた治療戦略、早期のリハビリテーションが重要になります。
研修医や若手整形外科医は、手関節外傷を診た際には月状骨周囲脱臼の可能性を常に念頭に置くことが求められます。正しい診断を行い、整形外科専門医へコンサルとし、適切な治療を引き継ぐことが大切です。
適切な診断と治療ができれば、患者の手関節機能を最大限温存することが可能です。
【参考文献】
- Safi et al. Palmar Trans-scaphoid Perilunar Dislocation: A Case Report and a Literature Review of Clinicodemographic Characteristics and Management Options. Cureus. 2024【8】
- Gjeluci et al. Trans-scaphoid lunate dislocation: A case series. Radiology Case Reports. 2022【9
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